シティ案内

今日の一枚へ

ジョリモント Jolimont Station

馬車タクシー御者休憩所

メルボルン百景トップ

2014年10月19日(金)
グランドランク キャブマンズ シェルター
馬車タクシー御者休憩所
Grand Rank Cabman's Shelter
ヤラパーク Yarra Park
ジョリモント Jolimont
メルボルン Melbourne
この場所の地図 Google Map

MCGメルボルンクリケットグラウンドの南東側斜面を下りたところにこのキャブマンズシェルターがある。もとはスプリング通りにあったものが現在の場所に移設されたもの。英国本国の歴史を語る貴重な遺跡である。


撮影データ Canon EOS 5D 絞り優先AE 評価測光 絞り5.0 1/320秒 ISO感度 100 露出補正 オート JPG レンズ EF 24-70mm f/2.8L USM
2014年1月17日午前10時52分板屋雅博撮影

 このキャブマンズ・シェルターはスプリング通りのグランドホテル、現ウィンザーホテルのすぐそばに在った。1898年にメルボルンキャブマンズ・シェルター委員会により建設された。設計は当時の有力な建築デザイナーNahum Barnetと云われている。
1896年頃にロンドンのセントジェームズスクエアで建設された当時の最新型休憩所をモデルとしている。
この休憩所は移動可能式長方形で約17.6インチx7.6インチの大きさ。壁は小型の材木製パネルを組み合わせたモジュラー式構造である。入り口の両サイドに窓があり、両側面にも窓、裏側麺には3面の窓が左右対称に配置されている。
四角形の窓は、空気循環のために開放できる。


Onmydoorstep

 このタクシードライバー休憩所は、英国の独特の歴史に基づいている。
馬車タクシーは、1800年代初頭に英国で普及した。有名なものではハンサムキャブがある。1834年に設計家ジョセフ・ハンサム(Joseph Hansom)によって考案され、特許となった一頭立て馬車である。安全性、経済性と共にスピードを重視した馬車タクシーであった。キャブの名称はカブリオレ(cabriolet)に由来する。従来の4頭立てに比べて、格段に安い賃料であり、狭い通路でも使え、スピードも速いので19世紀の英国、ロンドンで大流行した。

Cabmen's Shelter Fund

hansom cab

 当時の英国の法律では、盗難防止の観点から、タクシー馬車の御者が馬車を離れることを禁じていた。御者にとっては食事などの際、特に悪天候や雨の際には非常に難儀をしていた。パブなどで暖かい食べ物を買う場合には誰かを雇って買ってきてもらうなどの方法を取っていた。そこで関係団体などが基金を募って馬車タクシーのたまり場に休憩所の建設を始めた。これがキャブマンズ シェルターである。都心の繁華な場所に建設されるので、行政当局は休憩所の大きさを馬と客車の大きさを限度として許可した。1875年から1914年までにロンドンでは61か所の休憩所が建設された。ほとんどの休憩所では厨房を備えた売店が設けられ、暖かい食事とノンアルコールドリンクが調理されて販売された。椅子とテーブルがあり、本や新聞なども置いてあった。標準的な休憩所には10人程度が休憩できた。

 グランドランク キャブマンズ シェルターはメルボルンでもタクシー馬車が存在した証である。ロンドンの休憩所に比べると小さいが十分な大きさである。メルボルンキャブマンズ・シェルター委員会が存在していたので、相当数のタクシー馬車が存在していたと思われる。

1900年代に入るとアメリカで大量生産による自動車が発売され、馬車タクシーに代わり自動車のタクシー(Cabtaxi)が登場した。しかしロンドンの休憩所はその後も存在し、一般の人にもキオスクとして食事などを提供した。現在もいくつかも休憩所は営業を続けている。メルボルンではこの休憩所だけが現在、残っている。

 T型フォード (メルボルン百景)

このページのトップへ

inserted by FC2 system