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No.32 シンガポール・コテージ Singapole Cottages

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2019年2月20日(水)
シンガポール・コテージ 
Singapole Cottages
日豪プレス2019 年2月号
マーベラスメルボルン marvellous Melbourne
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日豪プレス 

1851年にビクトリアでゴールドラッシュが始まり、メルボルンの人口は3万人から30万人へと数年で膨張した。何もかもが足りない時代であった。特に住宅不足は深刻で移民上陸地に近いサウスメルボルンは、簡易テントが並び、テントシティやキャンバスタウンと呼ばれた。

撮影データ Canon EOS 5D 絞り優先AE 評価測光 絞り 10 1/500秒 ISO感度100 露出補正-1/3 オート JPG レンズ EF 24-70mm f/2.8L /USM 撮影:板屋雅博 撮影2016年1月21日 18:30


 植民地政府は、簡易式の住宅を数多く輸入した。それがアイアン・ハウスやシンガポール・コテージと呼ばれる簡易組み立て式のプレハブ住宅であった。1849年、米国カリフォルニアのゴールドラッシュで大量の簡易ハウスの需要があり、英国では簡易住宅を大量供給できる生産体制が整っていた。
価格も高い高級なものは、英国で製作されたもので、比較的安価な物はシンガポールで製造された。


簡易ハウスは、住宅だけでなく倉庫、店舗、教会など多目的に利用された。鉄製ベルハウスは、英国マンチェスターの鉄鋼産品製造業ETベルハウス社が特許製造したもので、大量に生産販売されたが、現在ではサウスメルボルンとスコットランド(英国王室所有)に世界でふたつだけが現存する貴重なものである。
ベルハウスの鉄製住宅は、多数の鋳物構造と屋根の配管要素を基本としている。ベルハウス社製鉄製家屋は、1971年にナショナルトラストによって保管された。ベルハウス社は、1842年に設立。1845年に工場用防火ドアを製作し、1848年には、プレハブ式鉄製ハウスを製造して大量にゴールドラッシュ期のカリフォルニアへ輸出。1851年には第一回ロンドン万博で優秀賞を受賞。1853年鉄製構造で特許取得。蒸気ボイラー、流体圧縮機で特許取得。鉄製ハウスの父と呼ばれる。

 メルボルン北部のロイヤル・パーク公園の鉄製ウォムズレイハウスは、メルボルンで設計され、ロンドンのジョン・ウォーカー社が製造したもので、リッチモンドの警察所や公務員住宅として数百戸が輸入された。
シンガポール・コテージは、東南アジアのマレー地区で南洋材を使ってマレー人の大工職人が制作して、シンガポールの中国人商人がメルボルンに輸入したものである。

 屋根を支える支柱、屋根下部のけた材、構造材部材の着色マークなどにマレー人の大工職人の特徴を良く表している。ビクトリア植民地政府がゴールドラッシュ期に押し寄せる移民への住宅供給の為に法律規制を弾力化するなどの対応策を取っていたことなども興味深い。
江戸末期で電気が無く十分な生産システムが無い時代に、英国の鉄鋼簡易住宅やアジアの木造簡易住宅が大量に生産され、金塊という財産があったメルボルンに大量に輸入されていたのは驚くべき事実である。産業革命が欧州やアジアでも進行していたことが伺える。
筆者の調査ではメルボルン市内の少なくとも6か所にプレハブ式輸入簡易住宅が良好な状態で保存保管されている。

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