2014年9月27日(土)
2014 AFL グランドファイナルシリーズ AFL Grand Final AFL オーストラリアンフットボール AFL Australian Football MCG メルボルン・クリケット・グランド メルボルン Melbourne
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グランドファイナルは27日に、ホーソン・ホークス対シドニースワンズの対戦となる。
この記事は日豪プレス紙2014年10月号に書いたもの。
撮影データ Canon EOS 5DMarkU 絞り優先AE スポット測光 絞りF2.8 1/1600秒 ISO感度 100 露出補正 オート
JPG レンズ EF 24−70mm f/2.8L USM
2010年9月24日13:08 板屋雅博 撮影
AFL FINAL SERIES 2014 グランド・ファイナル
観戦ガイド
今年のAFLは大混戦。例年は1-2チームが全勝か1敗で引っ張るが、今年はシドニー・スワンズが4敗でトップ、ホーソン・ホークスとジローン・キャッツが5敗で追っている。優勝もほぼこの3チームの中から出てくると見られる。優勝決定戦であるAFLグランド・ファイナル (GF)の行方を占う。(記事は8月24日時点のもの)
オーストラリアの国技とも云われるAFL(オーストラリアン・フットボール・リーグ)はメルボルンが発祥の地であり、全18チームの中でVic州が10チーム、QLD州、NSW州、南豪州、西豪州が各2チームの構成だ。
1リーグ制18チーム、23ラウンド(週:各チーム23試合)で行われている。18チーム1リーグというのは世界のプロスポーツでも例がない。18チームで23戦だと、2回対戦する相手チームと1回しか対戦しないチームが出てくるので公正ではない気がするが、この辺りの議論もほとんどないのがオージーらしい。上位8チームが、9月に行われるファイナルシリーズに参加できる。
今年は、トップチームが負け続ける異例の展開となった。開幕からの1位チームを挙げると、フリーマントル、ウェストコースト、ホーソン、ジーロン、ポートアデレード、ホーソンと代わり、8週から14週まではポートアデレード、その後は実力者ホーソンが台頭、終盤にシドニーがトップに立った。
中位チームで優勝の可能性があるのはポートアデレード、フリーマントル、ノースメルボルンまで。エッセンドン、コリンウッドはファイナルシリーズには出ても優勝の可能性は少ないが、異例の混戦の年だけに、下位チームの逆転優勝もありえる。
AFLファンをがっかりさせているのはコリンウッドの凋落だろう。2010年に史上初めての2回のGFを制し、5年間はコリンウッドの時代が続くとファンは期待したが、さほど中心選手は変わらないのに中位に沈んでいるのは不思議である。AFL随一の悪役でファン数も最大のチームに元気がないのは盛り上がりに欠ける。来年の奮起を期待したい。
2005年から2013年までの9年間の優勝回数ではジーロン3回、ホーソン2回、シドニー2回とこの3チームの力は他チームを圧倒している。2012年シドニー、2013年ホーソンと筆者の本紙での予想は的中しており、今年は筆者のサポートチームであるジーロンを押したいところだが、シドニーの実力が多少、上回っていると思われる。
右は2014年7月16日に引退を発表したニック・マックスウェル(Nick Maxwell)元キャプテン
今年のAFLの最も大きな事件は、豪州の3自動車メーカーが生産から撤退を決めたことだろう。
AFLの冠スポンサーはトヨタ自動車、フォードはジーロンに主工場がありキャッツの冠スポンサー、GM・ホールデンはコリンウッドのスポンサーだ。特に人口21万人のジーロン市ではフォード工場や関連工場で働く人は市人口の数割を占め、市全体がキャッツファンと云っても良いほど。フォード工場の閉鎖は市やキャッツに大きな影響を与える。今シーズン前にトヨタは2年間のAFL冠スポンサーの延長を発表した。販売を止めるわけではないのだが、長期的に見るとトヨタの冠スポンサーも影響を免れない。
ジロンキャッツのスポンサーはフォード自動車
2004年から10年に渡ってAFL会長を務めたアンドリュー・デモメトリオが、今季中の6月に辞任した。デメトリオは停滞きみであったAFLを今日の隆盛に導いた立役者として功績を知られているが、昨年起こったエッセンドン・ボンバーズの薬物問題処理ミスが原因とも云われている。
今年辞任した元AFL会長アンドリュー・デモメトリオ
注目のチームと選手
シドニー・スワンズ 1982年にシドニーに移動するまではサウスメルボルン・スワンズとしてメルボルンに本拠地があった。シドニー移動後の優勝は2回だが、この3年はトップレベルを保っている。
注目の選手は、ランス・フランクリン(ニックネーム:バディー)。最もゴール数が多い選手に与えられるAFLコールマン賞を2度受賞した大型キッカー。
バディーは昨年優勝したホーソンの中心選手であり、今年スワンズが優勝候補に挙げられるのもバディーの存在が大きい。従ってホークス戦は因縁の対決となる。GFがスワンズ対ホークスとなれば話題の中心となる。
アダム・グーズ 最優秀選手に与えられるAFLブロウンロー賞を2度受賞した名選手。広いオーバルを駆け巡るガッツ溢れるプレーは見もの。アボリジニ出身でもありAFLではないがオーストラリアン・オブザイヤーも受賞した有名人としても知られる。
ミッドフィルダーのジョシュ・ケネディー、キーレン・ジャックも好プレーが期待される。
アダム・グーズ
ホーソン・ホークス (本拠地:メルボルン市ホーソン)
この数年はホークスの時代と云っても良いほどに実力が充実している。
昨シーズンは、中盤から独走しぶっちぎりの優勝、2012年もシーズンでは優勝したがGFでは惜しくもシドニーに敗れている。バディーの移籍がなければ優勝候補筆頭と云える。
キャプテンのルークホッジを中心にまとまったチーム。キッカーではジェリー・ラフヘッド。サム・ミッチェル、シリル・リオリなどが注目の選手。
ジーロン・キャッツ (本拠地:Vic州ジーロン市)
2007年、2009年、2011年と優勝し、今年も優勝戦線の一角を占める。現在のAFLでNo1選手と云われるゲリー・アブレットが新チーム、ゴールドコースト・サンズに移籍するなど2007年当時の監督や中心選手は多くがチームを去った。下位チームが優先権を得る新人ドラフト制のAFLでこれだけ長くトップレベルを保っているのがジーロンの特徴だ。フォードの撤退など暗い状況の中で是非ともジーロンが逆転勝利を飾って欲しい。
トム・ホーキンス(愛称:トマホーク)
AFlを代表する大型キッカー。時にはラックマンも務める幅広いポジショニングを得意とする。
ジョエル・セルウッド 小柄だが闘争心が強いミッドフィルダー。キャプテン他にもスティーブ・ジョンソン、ジミー・バーテル、ハリー・テイラーなどスター軍団と呼ばれるほど名選手を多く抱えるが往年の爆発的な力強さには欠けている。
昨年の覇者ホーソンが連覇するか、バディーが加わったシドニーか、地力があるジーロンが逆転優勝か? 優勝はこの3チームに絞られるのは間違いないだろう。
GFが行われるMCG(メルボルン・クリケット・グランド)は、10万人を収容する豪州最大の競技場である。日本最大の国立競技場(5万人)の倍の能力であり、AFL GFは豪州最大のイベントである。
GFは伝統的にMGCで行われる。2004年から3年間はVic州以外のチーム同士でのGFとなり、他州でもGFを開催すべしとの声が高まったが、Vic州のチームが多数を占め、民主的な?AFLでは当分の間はMCG開催が続きそうである。
MCG入場券を得るのはメルボルンっ子でも容易なことではない。熱心なファンは子供が生まれると直ぐに豪州最古のメンバークラブであるMCC(メルボルン・クリケット・クラブ…、MCGを運営する団体)に加入申請する。順番待ちが20年ほどかかるので生まれた子供が成人することにメンバーになれ、やっとMCGのチケット購入優先権が取れる。
オーストラリアンフットボールは、オージールールとも呼ばれる独特のルールを持つが、主なものはこれだ。
フィールドは、楕円形でオーバルと呼ばれ、サッカーフィールドの2倍以上の広さを持つ。
プレーする選手の数は、1チーム18名。試合開始は、中央でアンパイヤがボールを地面にたたき付ける。(センターバウンス)
高く跳ね上がったボールを、ラックマンと呼ばれる選手が飛び上がって取り合う。
時に2mを超える長身のラックマンが高く飛ぶ空中戦がAFL最大の見所のひとつ。
相手のラックマンを妨害することは反則だが、自然のなりゆきで相手の上に乗り上げることも多く、その場合は更に高く飛ぶことが出来る。
ラックマンの周辺に位置するのは、ミッドフィルダー。
優秀なラックマンとミッドフィルダーの活躍が試合の優劣を決定する。
ボールは、ラグビーと同じ楕円形。
ボールを手で持って走ることも距離の制限があるが可能。
パスは、ハンドパスと呼ばれボールの下端を手で叩いて放る。
ハンドパスとキックでどの方向へのパスもOK。
ウェスタンブルドッグスの名プレーヤーであったアカマニス。グランドファイナル前のパレードで。
得点
AFLのグランドには、両サイドの中央に高いポールが2本、外側に低いポールが2本立っている。
中央のポール間に蹴り込むと6点(ゴール)。外側に蹴り込むと1点(ビハインド)が得点される。ゴロでも良いが、必ず蹴りこむことが必要。
50mアークと呼ばれる半円がフィールドに描かれているが、その外側からエースキッカーはゴールへ蹴り込んでくるのが最大のだいご味。キッカーの調子が良いと次々に6点が加算される。
ゴールの際には、アンパイアは独特の動作で両手のひと差し指を前に突き出す。
アンパイアのコミカルな動作にも注目したい。
ゲームは4クオーター制で行われる。各20分だがロスタイムがあるので実質25分ほどになる。2Qが終わった時点でハーフタイムとなるが休み時間を利用してフィールドでは各種の催しものが行われる。各チームファンの子供たちがフットボールをして楽しむ姿が見られる。
オフサイド
AFLのルールで他のスポーツと最も大きな違いは、オフサイドが無い点だ。
ゴール前で待ち構えるフォワードがキックされたボールをキャッチ(マーク)すると、フリーキックが与えられ、中央ゴールにけり込むと6点。AFLで100点を越える得点になることが多いのはこの理由。
ラックマンが中央でバウンスされたボールを獲得して、ミッドフィルダーがフォワードにキックでパスすると、わずか10秒ほどで6点が加算される。
特に最終第4クオーター(4R)は、ディフェンス陣が疲れてくるので、大量得点になりやすい。ラックマンが中央でバウンスされたボールを獲得して、ミッドフィルダーがフォワードにキックでパスすると、わずか10秒ほどで6点が加算される。
最期に大逆転が起こるので最期まで見届けたい。
AFLの楽しみ方 まずは贔屓のチームを決めよう。メルボルンで住んでいるとどのチームのファンか必ず聞かれる。この場合、サッカーやラグビーではなくもちろんAFLを意味している。AFLの各チームは、地域の歴史に根差しており独特のチームカラーを持つ。発祥チームのメルボルン、市全体で応援するジーロン、知性派のセントキルダ、悪役のコリンウッド、野生的なウェスタンブルドッグ、地域ファンが多いリッチモンドとホーソン、最多優勝回数を誇るカールトンとエッセンドン、他州チームは歴史が浅く優勝回数も少ないがこれからのAFLを担うチーム揃いだ。
GFは伝統的に9月最終土曜日、今年は9月27日に行われる。
その週にはGFウィークと呼ばれメルボルン全体がGFの興奮に包まれる。9月の土・日曜日にメルボルン市内を歩くとマフラーや帽子など贔屓チームのAFLグッズを身にまとった人々に出会う。ビジネス界や政界でも贔屓チームのネクタイ をしている人も多い。
メルボルンではビジネスの際に、AFLの話題から入るのは当然だ。知人友人がどのチームのサポーターであるか知っているのはメルボルンの常識とも云える。
GFウィークの主な行事
●ブロウンロー・メダル授賞式
(9月23日(月)7PM 於:クラウン・カジノ)
AFLは、ゴール、キック、マーク、ハンドリング、タックルなどすべてのプレーを数字化して個人総合得点を付けて順位を付けて発表している。これにより各選手の活躍度がひと目で分かる。ただしフェア・プレー度は得点化できないので審判が審査している。各試合で審判が記入した得点シートを授賞式の際に合計して発表する。
午後5時からアトリウムのエントランスに敷かれたブルー・カーペットで入場が始まるが、選手よりもむしろモデル顔負けの美人の奥様やガールフレンドと豪華な宝石とファッションに注目が集まる。テレビやメディアの取材が行われ、テレビで全国放送される。一般の人も入場シーンだけは見学できる。今年の受賞の本命は、AFL個人得点で見るとゴールドコーストのゲリー・アブレット、ジローンのキャプテン・ジョエル・セルウッドやシドニーのジョシュ・ケネディなどが挙がっている。私の予想ではセルウッドが有力。
●GF出場チーム・パレード
(9月26日(金)12PM 於:メルボルン市内)
GFの両チームによるパレードがメルボルン市内を通って旧財務省ビルまで行われる。午前11時ごろからスワンストン通りとコリンズ・ストリートに行こう。旧財務省ビル特設ステージでセレモニーが行われるのでスプリング通りに近い場所がお薦め。
メルボルンでは年間に何回も各種パレードが行われるが、GFパレードは最大の10万人が集まると云われる。パレード最後に旧財務省ビル前特設スタジオで両チームのキャプテンがGF優勝カップを前に健闘を誓うところが見所。
●AFLグランド・ファイナル
(9月27日(土)2:30PM 於:MCG)
フェデレーション・スクエアとMCG外の大型スクリーンに生中継されるので、ビールやワインを片手に声援しよう。MCGの外側ではスポンサー各社がブースを作り、いろんな催しものを実施している。市民がBBQなどして盛り上がっている。
●優勝チームお披露目会
(9月27日(土)6PM 於:フェデレーション・スクエア)
優勝チームがファンにお披露目。たいへんな数の人が集まるので、GF終了直後には向かった方が無難。
●優勝チーム・ファン祝賀会
(9月28日(日)12PM〜3PM 於:優勝チーム・ホーム・グラウンド)
ホーソンはグレンフェリー・オーバル、ジローンはシモンズ・スタジアム、シドニーはレイク・オーバルなどだが、詳細な場所・時間は当日の新聞またはチームのサイトに掲載 されるので要チェック。選手たちの話もたっぷり聞けるし、選手と一緒に写真を撮ったりもできる。
Melbourne Cricket Ground (MCG)
Brunton Avenue, Jolimont 3002
Telephone: (03) 9657 8867
http://www.afl.com.au/
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