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テニスクラシック 2010年  12月号

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最新トピックスfromオーストラリア 

Aussie Press (12月号:11月14日締切

タイトル:
オージー選手と2010年オーストラリアン・オープン


メルボルンの街は、真夏のクリスマスの真最中。 2010年オーストラリアン・オープンのPRをテレビや雑誌、看板などで目にするようになり、かなりの盛り上がりが感じられる。
オーストラリアの選手がどのようにマスコミで報道されているのか、新聞、雑誌で追ってみた。

たったひとりの兵士(ロンリー・ソルジャー)ヒューイット
 レイトン・ラスティ・ヒューイット。ラスティとは、‘錆びついた’という意味だが、このところ成績がぱっとしないヒューイットに付けられたあだ名だ。
男子テニスの世界の舞台でただひとり奮闘するヒューイットを‘ロンリー・ソルジャー’とも呼ぶ。 この言葉は、ヒューイット以外の選手が出てこない歯がゆい現状も表している。
低迷するオーストラリアのテニス界をこの10年間引っ張ってきたヒューイットも28歳になり、今年前半の新聞、雑誌などでも、引退のうわさが一番の話題であった。
しかし、ウィンブルドンでATP5位ファン・デルポトロを撃破しベスト8に入ったことは、ファンにヒューイットの復活を強く印象づけた。ヒューイット自身、今年の初めに「トップ10の選手を破る」と力強く宣言している。
やはりこの人が活躍しないとオーストラリアのテニスは盛り上がらない。

ヒューイットは、世界のトップの国々に後れを取るオーストラリアのテニス界の現状に強い不満を持っており、運営母体のテニス・オーストラリアの組織改革を訴えている。「この5年間で、オーストラリアテニス界の現状は更に悪化した。テニス・オーストラリアは、表面的には意気軒高だが、テニスの現場は、疲弊している。まず組織の改革が必要」と述べている。
 テニス・オーストラリアのジェフ・ポラード会長は、20年間その地位に君臨しており、運営システムやスピードがテニス先進国に比べて、古くなっているのも事実。 
 一方で、ヒューイットがテニス・オーストラリアの看板キャラクターになるという契約交渉がテニス・オーストラリアとの間でこの数年で進んでいた。ヒューイットの実績と名声を考えれば、この契約は確実と見られていたが、10月、この契約は頓挫してしまった。新聞では、ヒューイットが法外な契約金を要求したためと書きたてられたが、実際にはヒューイットは格安の契約金でも受けるし、家族の出演もOKと協力的であった。
ヒューイットのテニス・オーストラリア幹部批判のために、契約交渉を破棄されたことが真の原因だ。
その直後、ヒューイットは、かつての論敵であったポール・マクナミーが会長選挙に立候補した際に、マクナミーの応援に回った。このことは、ヒューイットの直情を知る新聞やテニス関係者を驚かせたが、一連の騒動の図式が、ヒューイット対ポラード会長であることが世間で理解されるようになった。
10月21日にオーストラリア全国から代表団がメルボルンに集まり、この20年間で初めての会長選挙が非公開で行われた。 結果は、残念ながらポラードが再任されたが、当選後、ポラードは、1年後には引退することを表明した。
テニス界の巨星ヒューイットがマクナミーを応援したことは、一般には重く受け止められており、来年にはマクナミーの会長就任が確実視されている。
2010年末には、ヒューイットの引退と、テニス・オーストラリアの組織運営にヒューイットが参画するシナリオが表面下で動いている。
表面的にはうまく運営されているように見えるオーストラリアのテニス界だが、旧態依然とした組織の疲弊は確実に進んでいる。
ヒューイットの強いリーダーシップがテニス・オーストラリアに新風を吹き込むことを期待したい。

期待の新星、バーナード・トミック
ヒューイットから11歳も年下になるが、期待の新星は、バーナード・トミック。
 トミックは、ヒューイットの後継者とマスコミでも度々表現されているが、国民的英雄のヒューイットに比べ、トミックのマスコミへの登場は各段に少ない。 
今年のウィンブルドンの際に、ヒューイットからトミックへ練習の提案があったが、トミックが何らかの理由で断った。これがマスコミに漏れて、トミックとヒューイットの間に何らかの確執があるのではないかと、ゴシップ好きな新聞で話題になった。
トミックは、「ブタ・インフルにかかったことが原因。ヒューイットにうつるとまずいので遠慮した。感染していることが広まったら僕自身が困るので、ヒューイットにも云えなかった」とオーストラリアン・オープンのスタート・セレモニーで語った。ジョークじゃないかと錯覚するほどのひどい言い訳だ。
ヒューイットは、「特に騒ぐほどのことじゃない。静かにしていればいいこと。変な言い訳は、テニス・オーストラリア幹部の入れ知恵じゃないか」と語っている。
この程度のことがメルボルンの一般新聞「ジ・エイジ」の話題として取り上げられるのは、やはりトミックが注目の人であることを示している。
オーストラリア・オープンで上位に進出することがあれば、トミック人気が爆発するのは間違いない。 

話題の人、エレナ・ドキッチ
問題の多い父親や、気性の激しさなどで有名なエレナ・ドキッチだが、2009年のオーストラリア・オープンでは、オージー選手としてはマスコミに最も名前が挙がった。 
 大会期間中は連日新聞を沸かせ、今年の『オーストラリアン・オープン・ストーリー』と呼ばれるほど、地元オーストラリアでは大きな話題となった。  
2006年にオーストラリア国籍に復帰した際、オージーの彼女への評価は決して好意的なものではなかった。家庭の事情があるとはいえ、一度見限ったオーストラリアへの復帰は、オージーに複雑な感情を抱かせていた。
しかし彼女のオーストラリアン・オープンでの復活と活躍は、ドキッチの複雑な家庭環境と合わせて、テニスファンだけでなく一般のオージーの感涙を呼んだ。 
テニス自体よりもゴシップ記事が好きなオージー好みのスター選手と云える。

本音で云えば、サマンサ・ストーサーしかいない。
2009年に最も成長した選手は、サマンサ・ストーサー。今年の全仏オープンではベスト4へ進出。更に10月の大阪HPオープンでは、WTAツアー初の優勝を飾った。この結果、ストーサーのランキングは、自己最高のWTA13位に急浮上。 トップテンも目前だ。
正直なところ、オーストラリアの選手中、グランドスラムで優勝を期待できるのはストーサーただひとり。
ゴシップ好きの新聞、雑誌にもストーサーのテニス以外の話題は、まったくと言っていいほど出てこない。テニス一筋に打ち込んでいるのだろう。
 ストーサーの強烈なサーブ、計算されたボレー、パワフルなグランド・ストロークは、オージーの期待の星、最後の砦だ。

真夏を迎え、オーストラリアン・オープンを目前にしたオーストラリアは、オージー選手の熱い戦いと上位入賞、そして優勝を強く期待している。


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