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テニス

テニスクラシック 2010年  6月号

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最新トピックスfromオーストラリア 

Aussie Press 6月号:4月14日締切)

タイトル:テニスのルーツ、リアル・テニス

オーストラリアには、各種のインドア・ラケットボールスポーツや、近代テニス(ローンテニス)のルーツと云われるリアル・テニス(ロイヤル・テニスとも云う)が現存している。テニスやスポーツの歴史を知る上で貴重な存在だ。

リアルテニスは、世界でも非常に限られている。
タスマニア州の首都ホバートの中心部に位置するオーストラリア最古のホバート・リアル・テニスクラブは、1875年に創立。
赤レンガの重厚かつ古びた倉庫を思わせる作りで、これがテニスコートかと驚かされる。中世ヨーロッパではキリスト教修道院の僧院で行われていたが、その名残を留めている。

ビクトリア州には、オーストラリアで2番目に古いロイヤル・メルボルン・テニスクラブや、金鉱山の街バララットのバララット・テニスクラブ、コープ・ウィリアムス・リアル・テニスクラブと3箇所のリアル・テニスクラブがある。シドニーのシドニー・リアル・テニスクラブを入れてオーストラリアには全部で5箇所のリアル・テニスクラブがある。全世界でもリアル・テニスクラブは、50箇所に満たない。

少し古いデータになるが、英国(27コート)、アメリカ(9コート)、フランス(3コート)、オーストラリア(6コート) の45コートとなっている。つまりリアルテニス人口は非常に限られていることが判る。

リアル・テニスは、中世から近代において貴族階級のスポーツとして限られた人口の中で存在したものであり、戦後、ローンテニスの発展とともに急速に減少してきている。

リアル・テニスの用具、ルールとコート
ラケットやボール、コートなどは、伝統を守り、近代的な技術は出来る限り排除している。
ラケットの材質は木製。長さは、ローンテニスとほとんど変わらないが、ラケットフェイスがスカッシュラケット並みにかなり小さくかつ変形している。 
ボールはコルクをベースとして手作りのもので表面は、色は白か黄色で若干、重い。

コートやルールは、スカッシュと似た部分がある。
リアルテニスコートは、標準タイプで34mx12mとローンテニスより縦横とも大きい。
サーブは、サーブサイドと呼ばれる側からのみ行う。
ユニークなのは、4面は壁に囲まれている点で、サーブサイドの左側には、ペントハウスと呼ばれる屋根付きのサイドがある。
高い天井はあるが、あまり高いロブは天井にぶつかることになる。
観客は、サーブサイドとペントハウスサイドの壁の裏側とから見学する。
サーブは、非常に多くの種類があるが、良いサーブは、レシーバー側のペントハウスの屋根に当たってからレシーバーのコートに着地することなど、ローンテニスとはかなり違う点が多い。 

世界大会と世界チャンピオン

スポーツ界で世界チャンピオンという言葉を最初に使ったのがリアル・テニスで、今から270年前の1740年のこと。現在の世界チャンピオンは、メルボルン出身でロイヤル・メルボルン・テニスクラブの元メンバーで英国に帰国したロバート・フェイヒーで、9連覇中。
2010年の世界大会は、5月にロイヤル・メルボルン・テニスクラブで行われる。
リアル・テニスの男子世界チャンピオンは、トーナメント方式ではなく、挑戦者を予選で決定し、チャンピオン対挑戦者の戦いで決定される。
長い歴史の中で、リアルテニスは男子のみのスポーツであった。女子はこの20年ほど前にやっと参加を認められた。
従って女子の世界チャンピオンは、現代的にトーナメントで決定される。


リアル・テニスの世界でも、全豪、全仏、全英、全米のグランドスラムが毎年、開催されている。
2000年から10年間、40大会でロバート・フェイヒーは、27回の優勝とダントツの強さを誇っている。

 ロイヤル・メルボルン・テニスクラブ
都心部から車で5分ほどのリッチモンドの閑静な住宅街にある。古色蒼然としたホバート・リアル・テニスクラブと違い総コンクリート製のモダンなデザインの建物。 
20台ほどが停められるメンバー専用駐車場には、ポリシェ、マセラッティなどヨーロッパの超高級車で満車となっており、高所得者層のメンバーで賑わっていることを窺わせる。
入り口には、堅牢な金属製のドアが硬く閉まっており電子キーを持つ会員しか内部に入ることは出来ない。ドアには、頭文字のRMTCが小さく記されているだけでこの巨大な建物が何の建物であるのか外部にはまったく伺い知ることは出来ない。
完全会員制で、一般の人は、まったく入ることを想定していないし受け付けていない。
もちろん会員募集中などとはどこにも書いてないし、そもそも会員を募集しているのか疑わしい。
絶えゆくスポーツであり、外部の訪問者は、大歓迎されることを想像して訪問したが、そのような雰囲気は微塵も無く、部外者を拒むような威圧的な姿勢。
何事にもリラックスしていてフレンドリーなメルボルンでは極めて異例のこと。

今回の取材は、最初は拒否されたが、クラブ会長の特別許可をもらってごく短時間のインタビューを許された。
クラブ内部の撮影はテニスラケットを除いて一切、禁止。会員数などの一般情報もまったく部外秘である。
内部は、豪華なスイミング・プール、スカッシュコート、アスレチックジム、サウナ、図書館、ミーティングルーム、バー、サロン、ダイニングルームなどがあり、それほど一般のスポーツクラブと雰囲気は変わらない。プロ・メンテナンスルームもあり、ストリンガー・メンテナンス技術者が常駐している。スポーツクラブとしてかなり充実した内容で広大な敷地だが、メンバー数が限られているので、内部は閑散とした印象を受けた。

リアルテニスは、限られた階層だけの超高級スポーツ?
メルボルンには、もちろん貴族階級は存在しないが、ロイヤル・メルボルン・テニスクラブは、英国系の高所得者層やトップエリート、その家族だけに会員資格がある特殊な組織。
ロイヤル・メルボルン・テニスクラブは、リアルテニス・オーストラリアン・オープンや、世界最大のリアル・テニス大会であるブーメラン・カップを開催しており、世界のリアル・テニス界でもトップクラブのひとつ。 
業界のリーダーであるクラブですらこの閉鎖性は何故なのか疑問が残った。 
リアル・テニスは、中世の貴族階級の遊戯にスタートして、未だにその伝統を受け継いでいる。近年は別とすると男子のみのスポーツである。英国系であり、極端に排他的なことなどを考えると、中世からの閉鎖的な秘密組織とのつながりも疑いたくなるような団体である。
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月の世界大会は許可されれば、ぜひ取材したいと考えている。

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