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2015全豪オープン

2015 全豪オープン 錦織圭

メルボルン百景トップ

2015年2月8日(日)
全豪オープン 2015 錦織圭
Australian Open Tennis
メルボルンパーク Melbourne Park
メルボルン
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日豪プレス2月号の全豪オープンの記事と写真を載せました。表紙にも採用されました。錦織の活躍を中心に記述しています。

撮影データ Canon EOS 5D マニュアル露出AE スポット測光 1/250 絞りF3.2 ISO感度 640 露出補正 オート JPG レンズ EF 400mm f/2.8L USM
2015年1月24日19:38 板屋雅博撮影

 全豪オープンは、アジア人初のグランドスラム(GS)男子シングルス優勝が期待される錦織圭への熱い人気で日本にとっては大いに盛り上がる大会となった。
錦織優勝の可能性を検証しながら前半戦の戦いを追った。
例年、炎天下のもと40度近い高温と熱気が特徴の全豪であるが、今年は20度ほどの肌寒い気候の中でスタートした。日本からは錦織圭、添田豪、伊藤竜馬、守屋宏紀の男子4名、伊達公子、奈良くるみの女子2名の6選手が出場した。


  昨年の全豪で錦織は世界ランク17位とホープのひとりとはいえ優勝候補ではなかった。しかし今年はまったく違う全豪が錦織を待っていた。
この10年間を制してきたフェデラー、ジョコビッチ、ナダル、マレーの4強に陰りが見え、昨年は全豪でワウリンカが優勝、全米では錦織を決勝で退けて優勝したチリッチなどの新興勢力が台頭してきた。
世界ランク5位は当然のことだが立派な優勝候補のひとりである。世界からの注目度もまるで違う。今年の全豪では男女各128名の選手が頂点を目指して戦っている。


 全豪第5シードの錦織にとっては第3戦まではノーシードか低い順位の選手と戦う。試合前の錦織の練習を見てみると体調も良く、12月に十分に休みを取っていたことが分る。全豪前の1月にはブリスベン国際やメルボルンのクーヨンクラシックを全豪の練習試合と位置つけて試合勘を取戻し、活力全開でメルボルンへ乗り込んできた。


 錦織の初戦は大会2日目、相手は、スペインのニコラス・アルマグロ。世界ランクは69位だが元トップ10と実績があり経験も豊富で決してあなどれる相手ではない。
立ち上がりにさっそくブレークを許し、第二ゲームもキープされ、いきなりピンチとなるが徐々に持ち直し、第10ゲームでブレークして第1セットを奪う。
第2セットは激しい展開となりお互いにブレークを繰り返す激戦となった。
タイブレークとなったが、落ち着いたプレーで7本を取って2セット連取。第3セットは気落ちした相手からブレークを2度奪い簡単に取って、ゲームセット。
錦織は、4大会の優勝を2015年の目標としているが、同時に世界5位の順位を守ることも公言している。順位を守ることは下位の選手に取りこぼさないことを意味する。

 ノーシードと云っても実力はそれほど変わらないし、高い賞金とランクポイントを目指して、必死で戦ってくるので慎重に戦うことが必要となる。錦織は下位の選手との戦い方がうまい。1セット目は相手の実力やその日の調子を見ながら慎重に対応して、決して無理な攻撃はしない。従って競り負けることも出てくる。コーナーを丁寧に突いて、できるだけ相手を走らせて消耗させるのも錦織の常とう手段である。

 
2セット目になると疲れが出てきた相手から巧みにミスを誘い出す。最後のセットになると強打で相手をたたいて、根負けした相手に諦めさせて、とどめを刺す。
つまり自分はできるだけ消耗を避け、相手の動揺に乗じて勝ちを取るのが錦織流だ。
準決勝以上で順位が上の強敵とフルセットを戦うのは仕方がないにせよ、第4戦まではできる限り早い段階で勝負を決定して体力を温存するのは優勝を目指すための必要条件である。酷暑のメルボルンでかつて何度も痛い目にあってきたことを錦織はしっかりと覚えている。

 
全豪ではセンターコートはロッドレーバーアリーナ(RLA)、第2会場はマーガレットコートアリーナ(MCA)、第3会場はハイセンスアリーナ(HA)と3つの開閉屋根式の近代的なコートがある。錦織の第1戦はMCAで観客席も7500席と大きい。
この日はサッカーAFC豪州大会でヨルダン戦が全豪会場に隣接したメルボルン・サッカー競技場であったので、日本人の応援が特に多い日であった。
試合後のインタビューで錦織は日本人の声援が多い全豪をグランドスラムの中で一番好きだと語った。ファンの声援を味方につけるのはどの選手も同じだが、声援に惑わされることなく冷静に戦うのも錦織流である。


 第2戦はクロアチアのイワン・ドディグ。ベテランだが強打が持ち味。この試合も第1セットは慎重に攻め、相手にブレークを2度も許し、そのまま第1セットを取られる嫌な流れになった。しかし錦織はまったく動ずることなく、第2セットも第5ゲームまでは両者が取り合った。最後に錦織が強打を連発してあっさりブレークして第2セットを取り互角に持ち込んだ。
この試合で目立ったのはサーブだ。丁寧にコーナーをつきエースを連発した。

昨年まで錦織の最大の欠点はサーブであった。4強は第1サーブでのミスが少なく、ダブルフォールトはほとんどない。錦織もスピードはともかく、正確なサーブが頂点を目指すためには求められていた。サーブは大幅に改善して自信がついたと自慢していた錦織であったが、実際に全豪でもサーブは非常に有効であった。コーナーなど相手がいやがる場所に落とし、多くのノータッチエースを奪った。

一度優位に立つと自在にゲームをコントロールし相手に流れを渡さない。第3セットも2度のブレークを取ってあっさりと奪取。錦織は自分のサーブの時には、相手に付け入る隙を見せずにあっさりと取り、逆に相手のサーブの時にはしつこく食い下がり、隙があればブレークに持ち込む。第4セットはドディグが意地を見せて食い下がったが、6ゲームオールとなりタイブレークで7連続ポイントを取って錦織が勝利した。

審判に対しても堂々と意見を言う錦織が見られた。サーブが入っているにも関わらず得点とされなかった審判のミスに対して、食い下がったのだ。英語で審判と渡り合える能力、交渉術もまた戦術のひとつであり、総力戦で戦うのがトップ選手の資格だ。
第3戦はアメリカのスティーブ・ジョンソンとハイセンスアリーナでの決戦となった。大柄でサーブも強烈でしつこい。老けて見えるが錦織と同じ25歳で世界ランクは38位だが、2回戦で第30シードのサンチアゴ・ギラルドをストレートで破って勝ち上がっており、錦織と実力は同格とみてよく隙を見せれば負けを覚悟する必要がある選手だ。

 第1セットは錦織がジョンソンの強打とスピードがあり強力なサーブに押され、例によって慎重にスタートしたこともあるが、タイブレークからミスが出て第1セットを落とした。
この対戦で観客を驚かせたのは錦織の落ち着きだった。ブレークを許しても動ずることなく堂々と自分のプレーを続けた。左右のコーナーを巧みに突く錦織のストロークに振り回されるジョンソンは強打に頼ってミスを連発し始めた。隙を見せる相手に対して錦織は容赦なく襲いかかる。錦織のサーブはスピードは200km以下でそれほど強烈ではないが、コーナーを丁寧についてエースを連発。あっさりと2セットを取って優位に立った。

ここからが錦織ショーの始まりだった。流れを変えるためもありジョンソンはトイレブレイクを取った。錦織は十分な時間を取ってベンチに戻ったため、ジョンソンは焦れた様子を見せ始める。隙を見せると反撃を食らう可能性があるため、錦織は慎重を期したのだ。トイレから帰った錦織は大歓声の中、なんと靴ひもを結びなおした。豪胆というか緻密な戦術か、錦織の成長は限りなくトップに近づいていると感じた。第4セットに入っても、錦織はペースを落とさずあっさりと勝利を収めた。1-2戦を通じて錦織は2セットを落としたが、寒冷な天候もありほとんど消耗はない。

錦織はこれまでもコーナーを突き相手を振り回すストローク、ダウンザライン(ライン際)へのするどい返球、バックのうまさなど世界一流のものを持っていたが、欠点であったサーブが改善されている。更に常に落ち着いていて動揺がすくないこと、審判への抗議・アピールのうまさ、トイレブレイク、インジャリータイムなどの時間マネジメントのうまさなども含めて総合力が世界トップレベルになっている。まさしく昨年の流行語となった「勝てない相手はもういないと思う。」を言い放ち、世界5位がダテやフロックではないことを我々に見せつける前半戦であった。
男子のトップ選手ではジョコビッチが調子が非常に良く、マレーも多少の苦戦はしているが順調に勝ち上がっている。フェデラーはイタリアの伏兵アンドレアス・セッピに苦杯を飲んだ。ナダルも準決勝でベルディハにまさかの敗退となった。




4回戦で第9シードのダビド・フェレールをストレートで下した錦織は、いよいよ準決勝から上位シード選手と激突することになった。準々決勝の相手は第四シードのスタン・ワウリンカだ。
第一セットからワウリンカの210Kmを超すサーブが第一サーブから次々と錦織を襲う。
錦織はいつものように第一セットはエンジンがかからない。ワウリンカは強烈な片手バックハンドのクロスも面白いように決まり始めた。絶好調のワウリンカに対して、錦織はたまらずイージーミスを重ね劣勢に追い込まれた。1セット目を3−6で落とした錦織は、第二セットも押されて4−6で2セットダウンと追い込まれた。


 第三セットに入ってやっと調子を上げた錦織は初めてブレークするが、直ぐにブレークバックを許してしまった。
タイブレークに持ち込まれ、最後は5連続ポイントで一旦は追いつくが最後は逃げ切られて試合終了となった。
ベスト8で大会から姿を消すことになった錦織だが、自信もついた大会であった。
来年の更にひとまわり成長して、是非優勝を飾ってもらいたい。


 
一回戦
Nicolas Almagro (ESP) 4 61 2
Kei Nishikori (JPN) [5] 6 77 6

二回戦
Ivan Dodig (CRO) 6 5 2 60
Kei Nishikori (JPN) [5] 4 7 6 77

三回戦
Steve Johnson (USA) 79 1 2 3
Kei Nishikori (JPN) [5] 67 6 6 6

四回戦
David Ferrer (ESP) [9] 3 3 3
Kei Nishikori (JPN) [5] 6 6 6

準々決勝(ベスト8)
Stan Wawrinka (SUI) [4] 6 6 78
Kei Nishikori (JPN) [5] 3 4 66

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